2008年09月08日
対立の構造
サマック首相のこの行為は、都合が悪くなると黙ってしまうというタイ人がよくやるパターン。
こんな事を当のタイ人に言っても、あまりいい顔されないですが。
何を言っても仕方ないから、黙ってやり過ごしてしまおうというものですが、
陸続きの外国からの侵略や村ごとの紛争も、これで切り抜けて来たことだってあるのだから、よく考えれば争いごとを避けようとする一つの立派な策なのかも。
でも、今回はやり過ごすことはできないですよねぇ。いくらなんでも。
さて、PAD対政府(首相)という今回の対立ですが実は内状はかなり複雑。
それだけに首相も解決に窮しているのだと思います。
(別に首相を擁護するわけではないですが)
この辺で、今回の対立の構造をできるだけわかりやすく整理してみましょう。
表面で見えている対立
・首相vsPAD
・タクシン氏vsソンティー氏
見えざる対立
・都会vs地方
・貧困層vs富裕層
・新勢力vs旧勢力
・バンコクvs南部
・仏教vsイスラム教
歴史的対立
・為政者vs庶民
・政府vs軍
今回の対立が複雑なのは、上に挙げた様々な対立が絡み合っているからです。
ただ、ここに入って来ないけど今のタイに必要不可欠なものがあります。
王室と民主主義です。
王室と対立しようとする勢力は、今のところありません。少なくとも現国王が存命で執務している間は、無いでしょう。
民主主義については、意見が分かれるかもしれません。なにを基準にするか、そもそも円満な民主主義なんてまだどこにも実現していないのですから。
しかし、今回は民主的な選挙で選ばれた首相を、非民主的な手段で追い出そうとしているとも言えるのですが、そうなる軍によるクーデターと何が違うのか。結果が出てみないと答えは出ないでしょう。
上述の中から、わかりづらいものをいくつかを説明しましょう。
◆新勢力vs旧勢力
この対立は、タクシン氏に利権を奪われた旧勢力が、プレム氏と軍を担いで一時的に成功した2006年のクーデターが、結局は失敗に終わったために、ソンティー氏とチャムロン氏にスポンサー的協力をしているものと思われる。
表題だけを見るとタクシン派を旧勢力と思われるかもしれませんが、タクシン派今でも新勢力なのです。これには、少し説明が必要ですが。タクシン氏がタイ愛国党でトップに立つまで、1992年以降に政権や利権を持っていたグループがいます。それが旧勢力です。クーデター後に暫定政権として指名された人の中には、その旧勢力が多く含まれていました。
また、1992年5月に起きた血の惨劇に至る流れからその後もタクシン氏は、現PADリーダーのチャムロン氏を師を仰いで同氏の党で重要なポジションにいました。しかし、チャムロン氏自身は国王と国民の信望も厚いが旧勢力の代表とも言えるプレム氏の秘書官を務めていた。
◆都会vs地方
これは貧困層vs富裕層とかなりダブっています。正しく格差の対立です。実はこれは1992年にもあったものですが、その時には富裕層というより当時勃興していた中間層が中心でした。今回はその中間層のほとんどは一歩引いているようです。
しかし、先日ラムカムヘン大学の学生が襲撃されたことで、学生達がPAD側に付き始めています。この流れが大きくなれば、血気盛んな若者のことですから中間層を巻き込んで、1992年のような事態に発展する可能があります。
◆為政者vs庶民
タイの為政者は軍政の時代から今に至るまでも、仏教と王室を国民をまとめるために使ってきました。今のタイは日本と同じ立憲君主議会制民主主義ですが、王室に対しては不敬罪があり、何も発言する事が許されていません。また、仏教への信仰も、穏やかではあるものの揺るぎなく堅固に守られています。歴史的に見れば、その思考自体も為政者によって上手に植え付けられたものと言えるのですが、これは決して悪い面だけではないことは、タイ人が穏やかさとして体現しています。
しかし、この辺もそろそろ限界が来ているのかもしれません。全てのタイ人が現国王亡き後を不安に思っているというのも、対立に密かな悲壮感を加えている原因とも言えるでしょう。
◆政府vs軍
今現在、軍は中立を守っていますがタクシン氏と同期のアヌポン陸軍司令官は、反タクシン派と言われています。しかし、安易に軍が出てしまうと立て続けのクーデターとしてタイがやっと築き上げた今の位置が瓦解するということをよく理解しているようです。この点はサマック首相も同じなのか、暴力に訴えないことは、評価されても良いかも知れません。
少なくとも「や〜めた!」と立て続けに放り出してしまうどこかの首相よりずっと気骨がありますね。ただし、軍も一枚岩ではないようで、タクシンシンパもたくさんいるとのことですから、司令官を出し抜いてのクーデターも可能性は否定できません。
★今後の予想
全くわからないですね。いろんな可能性がありますが、サマック首相は遅かれ早かれ退陣することになるでしょうし、そうしないと事態は治まりそうも無いです。PADが力で訴えることはできないので、今後のキーは首相と軍ということになるでしょう。
・サマック首相がいつまで力を行使しないでいられるか。
・軍が出て来るのか。どちらに付くのか。
☆国王は?
「最後には王様が出て来ておしまいでしょ?」という声も聞かれますが、今回は最後まで出て来ない気がします。その理由は、高齢ということもありますが、国王自身がもうそろそろ、どっちに転んだとしても、タイは人としても、国としても王室を頼らないようになって欲しいと願っているに違いないからです。ならば、王制廃止をすれば?という声もあるでしょうが、それは性急すぎるのでしょう。次の世代に代わるまで(あまり時間はないかも知れませんが)、あるいは代わって以降にゆっくりと存在感を小さくしようとしているのではないでしょうか。
しかし、先にも書いたようにこの世代交代もタイ人にとって見えざる恐怖となっています。王女が継ぐのであれば円満に治まりますが、皇太子が継ぐとなると・・・。前回のクーデターが起きる前までは、もしタイに事が起きるとしたら、世代交代のときというのが大方の見方でした。
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と、まだまだ事態の推移は注視しないといけませんが、どこへどのように進むかは、タイ人自身が決めること。そして、それを自分たち自身が行動で示そうとすることには、現代の日本人は見倣わなくてはいけないでしょう。
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